封筒型長財布「Encase(エンケース)」は、その名の通り、封筒のような形が印象的な長財布です。
一見すると、一枚の革を折りたたんだだけのような、とてもシンプルな佇まい。 しかし、その細部には「日々の暮らしの中で使いやすくなるように」「使う時の所作が美しくなるように」という想いとアイディアを込めています。

目新しい機能を足すのではなく、形そのものを整えることで、閉じる・しまう・取り出すという一連の動作を自然でスムーズなものにしたい。そんな思いが、この財布の根底にはあります。
今回は、Munekawaのロングセラー、封筒型長財布Encaseの、革財布としての合理性と細部に込めた工夫の数々を、作り手の視点からご紹介します。
シンプルな佇まいの理由「金具を使わない」
Encaseは「薄く、軽く持てる」ことに重きを置いて製作しています。厚みは約2cm、重さはわずか87gほどです。
前後に3か所ずつのカード段、マチ付きの札入れ、1か所のマルチポケットと、シンプルな構成ながら、カードは6枚、紙幣は25枚〜30枚ほど収納可能。
薄く持ち歩けることを優先して、小銭入れはあえて設けていません。

Encaseの薄さと軽さの理由のひとつが「金具を使っていない」ということ。
ファスナーやホックボタンなどを使用するとどうしてもその分厚みが出たり、重くなってしまいます。
また、金具を一切使わないということは、「壊れる可能性のある部品が減る」ということでもあります。 金具は革と違い、どうしても経年によって摩耗してしまうもの。実際にMunekawaに寄せられる修理のご相談も、多くが金具部分の不具合によるものです。
その点、Encaseは金具を使っていないので、ホックやファスナー由来の故障が起こらず安心して長く使っていただきやすい製品といえます。
留め具を持たずに、自然と閉じる理由
Encaseのフタは、袱紗(ふくさ)のように三角形のフタの先端を差し込んで閉じる形です。ボタンも留め具も使わず、先端を差し込むだけで留めています。
中には「それでちゃんと閉まるの?」と不安に思われる方もいらっしゃいます。こうした疑問を持たれるのも自然なことだと思います。
金具を使わない差し込み式のフタは、少しでも寸法が甘いと、革自体の張りに負けてふわりと浮き上がってしまいます。 かといって無理に深く差し込もうとすれば、日々の開閉が窮屈になってしまいます。

その点を解決するために、Encaseはフタの三角形の斜辺に「ごくわずかな内向きのカーブ」を付けています。 ほんの少し角度をつけることで先端がわずかに鋭角になり、奥までスッと差し込みやすくなります。
見た目には目立たない、些細な工夫ですが、何度もパーツの形を変え試作を繰り返すなかで導き出した、Encaseの使い心地の根幹に関わる重要な工夫といえるでしょう。
プライバシーに配慮した、わずかな工夫
カードポケットは前後に3か所ずつ、計6枚が収まる設計です。 ここにも、小さな工夫を凝らしています。前段と後段のカードの高さを揃えることで、奥に入れたカードが、手前のカードの影に自然と隠れるようにしました。

人前で財布を開く時、中身は意外と人の視界に入りやすいものです。 クレジットカードの氏名やカード番号、あまり周囲に見せたくないカードは奥の段へ。よく使うポイントカードやICカードは手前へ。
この工夫も些細なことなのかもしれません。しかし、これだけでも誰かに手元を覗かれているような無意識の緊張がふっと和らぎます。 実際にお使いのお客様からも、「中身が見渡しやすく、人前でも落ち着いて財布を開ける」というお声をよくいただきます。
指先ひとつで、美しく整う所作
Encaseを製作するうえで、私たちが特に大切にしたのが、「お札を取り出す所作」です。
札入れの手前を緩やかなアーチ状に形作ることで、親指でお札に手がかけやすくなり、紙幣を1枚ずつ指でスライドさせやすい構造にしています。

お会計のたびにお札の束をまとめて引き出し、パラパラと数えるのではなく、指先で必要な枚数だけ抜き取り、手渡す。このわずかな所作のスムーズさが、長年愛着を持って使える心地よさへとつながっていくと、私たちは考えています。
長財布だからこその収納力が活きるマルチポケット
カード段の奥には、しっかりと深さを持たせたポケットをひとつ。 新幹線のチケットや幅の広い領収書から、パスポートや銀行の通帳まで、大切な紙ものを折らずにすっきりと包み込みます。

意外と持ち歩きや管理に困る瞬間があるこうした大きめの物も、スマートにまとめておける。これも、長財布だからこそできる、Encaseのメリットのひとつかもしれません。
Munekawa代表・宗川によるEncaseの解説動画も併せてご覧ください。
静かな配慮が、育てる時間
Encaseは2014年に「大阪製ブランド」の認定をいただき、2017年には「おもてなしセレクション」金賞を受賞しました。 目を引く派手な新機能ではなく、日々の所作にそっと寄り添うような細部の配慮に目を留めていただけたことを、作り手としてとても嬉しく思っています。

金具を使わない構造だからこそ、10年近く愛用してくださっているお客様もいらっしゃいます。 「手の中にしっとりと馴染んで手放せない」 「少しずつ色艶が深まり、自分だけの表情になっていくのが愛おしい」
ブッテーロは、使い込むほどに透明感のある艶が増し、豊かな風合いへと育っていく革です。 日々の何気ない動作を重ねるごとに、持ち主の手のひらの形や仕草に寄り添い、世界にひとつだけのお財布へと育っていきます。
手に取って、確かめてみてください
本日は封筒型長財布Encaseの細部に込めたこだわりや想いについてご紹介しました。
フタのわずかなカーブ、カードの頭を揃える段差、お札をすべらせるアーチ。 どれも、日常の小さなストレスをそっと取り除き、手元の所作を穏やかに整えるための静かな工夫です。

フタがすっと差し込まれる感触や、指先でお札を送り出す心地よさは、実際に手にしていただいたときにこそ、一番よく伝わるものかもしれません。
大阪・大国町のアトリエ併設直営店では、ご自身のカードやお札を入れて、その使い心地をお確かめいただけます。 遠方の方も、オンラインストアでディテールの写真をじっくりとご覧いただけたら幸いです。
日々の手元に、静かな心地よさを。 Encaseが、あなたの毎日に穏やかに寄り添う道具になれば嬉しく思います。
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