直営店や催事の店頭で、時々こんなご質問をいただくことがあります。
「これは縫製ミスですか?」
「この糸が重なっている箇所は、問題ないですか?」
指さされた先にあるのは、糸が幾重にも重なった縫い目。確かに、見慣れないと少し気になるかもしれません。
でも、ご安心ください。その糸の重なりには、長く使っていただくための大切な役割があります。
今回は、三重縫製のこと、あえて縫わないという選択のこと、そして糸が傷んだ時の直し方のこと。Munekawaの縫製に込めた考え方をご紹介します。
糸が重なるのには、理由がある
Munekawaの製品をよく見ると、ところどころに糸を三重に重ねて縫っている箇所があります。
財布やバッグは、毎日何度も開け閉めされ、出し入れのたびに力がかかります。特に力が集中しやすい箇所は、通常の縫製のままだと糸が傷みやすく、ほつれの起点になりやすい部分でもあります。
そこでMunekawaでは、そうした箇所にあえて糸を重ねて縫うことで、糸切れやほつれを防いでいます。
一見すると、糸が重なってしまっているように見えるかもしれません。けれどその重なりは、これから長い時間を共にする道具のために、意図して施した縫い目です。
縫うことと、縫わないこと
「しっかり縫われているほど丈夫」というイメージがあるかもしれません。パーツを増やし、縫製箇所を増やすほど、堅牢な製品になりそうな気がします。
しかし、実際は少し違います。

針穴は、革に開けた小さな「穴」です。縫製箇所が増えるほど、使ううちに糸が擦れて切れる可能性のある場所も増えていきます。
さらに、糸のわずかな出っ張りが段差になって、カードの出し入れなどの使用感を損ねてしまうこともあります。繊細な話ですが、こうした小さなストレスの有無が、毎日使う道具の使い心地を左右します。
だからMunekawaでは、縫うべき所は重ねてしっかり縫い、縫わなくて良い所は縫わないという考え方で製品を設計しています。

たとえば薄型二つ折り財布「Carriage」や薄型小銭入れ「Undo」は、近年の見直しで縫製箇所を減らした製品です。負荷がかかりやすい部分の縫製をあえてなくすことで、長年使っても糸切れしにくくなりました。

CarriageもUndoも、長く製作していた製品でしたが、折り曲がる部分の縫製を抜くことで、より一層不具合が起こりにくく改善することができました。
また、Munekawaでは、コンパクトさと丈夫さを両立するために裏地に豚革を使用しているアイテムも多数ありますが、こうした牛革と豚革を貼り合わせているパーツにも、ほとんど縫製をいれていません。

強力な接着剤で貼り合わせているうえ、豚革と牛革が相性がよく、一度接着剤で貼り合わせると、もう剥がすことができなくなるくらい強く接着するためです。
こうした素材の選定も含めて全体を設計し、縫製が必要な箇所、その中でも特に負荷がかかりやすい場所を見極め、縫製を行なっています。
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ほつれても、直せるように
それでも、何年も使い続ければ糸は少しずつ傷んでいきます。Munekawaの製品は、そんな時のことも考えて縫製しています。
糸がほつれた場合、元の針穴を使って縫い直すことができます。革に新しい穴を開けずに修理できるため、革への負担を抑えながら、もとの状態に近づけて整え直せます。

「壊れにくいように作る」ことと、「壊れても直せるように作る」こと。この2つは、Munekawaのものづくりの中でいつもセットになっています。糸のほつれや縫い直しのご相談は、いつでもお気軽にお寄せください。
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どこを、どう縫うか
縫製は、設計力と技術力、その両方が表れる箇所です。それは、綺麗に縫えているかどうかだけではありません。
どこを重ねて縫い、どこをあえて縫わないか。そんな設計の判断にも、作り手の考えは表れます。そして縫う時には、その設計の意図を汲み、狙うべき一点に確実に針を落とす。そこには、縫い手の確かな技術が求められます。
お手元のMunekawaの製品に糸の重なりを見つけたら、それは長く使っていただくための設計の跡です。どうぞ安心して、これからも使い込んでいただけたらうれしいです。
