「革製品を長く使うために大切なこと」と聞くと、多くの方が「革のお手入れ」を思い浮かべるのではないでしょうか。
もちろん革製品のお手入れは大切です。Munekawaでも、革の状態を美しく保ち長く使うために日々のお手入れをおすすめしています。

しかし、お客様から修理のご相談をいただく中で感じるのは、日々のお手入れの有無よりも「普段の扱い方」の方が革製品の寿命に直結することが多い、ということです。オイルケアで軽い水シミやキズを軽減できても、型崩れした形をもとに戻すことはできません。
今回は、作り手として日々革に触れている私たちの視点で、「革製品の寿命を縮めやすい習慣」を注意度別にご紹介します。
すべてを完璧にする必要はありません。ご自身に当てはまると思うものだけでもチェックして、革製品を長くきれいに使うための参考にしてみてください。
革製品の寿命を縮めるNG習慣一覧
私たちが革製品を製作する中で感じている「寿命を縮めやすい習慣」を注意するべき度合いの順に一覧にしました。
| NG習慣 | 注意度 | 起きやすいトラブル |
|---|---|---|
| お手入れを全くしない | ★☆☆☆☆ | 乾燥・ひび割れ |
| 濡れた手で触る | ★★☆☆☆ | 水ジミ・水膨れ・乾燥 |
| 無理な力を加える | ★★★☆☆ | 革の伸び・変形 |
| 湿気がある状態で使い続ける | ★★★☆☆ | 型崩れ・カビ |
| 容量以上に詰め込む | ★★★★☆ | 型崩れ・縫製部への負荷 |
| お尻のポケットに入れたまま座る | ★★★★★ | 歪み・縫製部への負荷 |
修理のご依頼をいただく中で、革そのものが限界を迎えているケースは実はそれほど多くありません。革は十分良好な状態なのに、特定の部分だけに負荷が集中して縫製や構造が先に傷んでいるケースの方が目立ちます。
革製品の寿命は「革そのものの状態」よりも「製品としてどう扱われてきたか」に大きく左右されると言えます。
順に、それぞれ詳しく見ていきましょう。
【注意度順】革製品のNG習慣
1.お手入れを全くしない(注意度 ★☆☆☆☆)
まずは「革のお手入れを全くしない」です。意外に思われるかもしれませんが、注意度は一番低い位置にしています。
Munekawaで使用しているブッテーロやブライドルレザーなどの植物タンニンなめしの革は、しっかりとオイルを含んでいます。また日常的な使用の中で手の油分を吸収するため、ケアをしなくても使い続けること自体は十分に可能です。

とはいえ、革は使ううちに少しずつ表面の油分が抜けていきます。定期的に保湿することで革のコンディション(シミ、傷、水膨れを軽減)は安定し、より長く綺麗な状態を保つことができます。
頻度の目安は、革の表面がカサついてきたと感じたタイミングで年に数回程度。特別なことをする必要はなく、市販のクリームやオイルを薄く塗ってあげるだけで効果はあります。
2.濡れた手で触る(注意度 ★★☆☆☆)
手を洗った直後や、飲み物の結露がついた手でそのまま革に触れていませんか。
革は水分を吸いやすい素材です。濡れた手で繰り返し触ると、水ジミや水膨れの原因になります。さらに、水分が蒸発する際に革の油分も一緒に抜けるため、乾燥を早めてしまいます。

水滴が付いても、すぐに拭き取れば問題ありません。ただし、日常的に濡れた手で触ることが多かったり、水滴を長時間そのままにしておくと水シミになってしまうことも。一度ついた水ジミは完全に消すのが難しく、放置すればその部分から乾燥やひび割れが進行することもあります。
革小物は毎日携帯する機会が多いものですので、ふとした瞬間に濡れた手で触れてしまうこともあります。何気ないことですが、注意するようにしましょう。
3.無理な力を加える(注意度 ★★★☆☆)
次に気をつけたいのが「製品に無理な力を加える」ことです。
財布のフタを必要以上に反らせたり、ホックボタンを力任せに開閉したりといった動作が繰り返されると、革の繊維が伸びてしまいます。一度伸びた革は元には戻りません。

製品を設計するとき、折り目やフタの付け根など力がかかる部分には、革の厚みを調整したり、縫製を三重にして耐久性を持たせています。ただ、それはあくまで「通常の使い方」を前提にした設計です。想定を超えた角度で繰り返し曲げると、どうしても繊維の限界を超えてしまいます。
神経質になる必要はありませんが、「必要以上の強い力で開閉しない」「本来の可動域を超えて曲げない」ことを頭の片隅に置いておくようにしてみてくださいね。
4.湿気がある状態で使い続ける(注意度 ★★★☆☆)
革は繊維の間に水分を取り込む性質があります。汗をかいた手で長時間握っていたり、雨に濡れたまま放置したりすると、繊維が必要以上に水分を含みます。この状態が続くと革が柔らかくなりすぎて形が崩れやすくなるほか、カビの原因にもなります。

革は「湿って乾く」を繰り返すたびに少しずつ収縮する性質も持っています。カードポケットのサイズがわずかに変わったり、フタの反りが出たりするのは、この繰り返しの蓄積であることが多いです。
濡れてしまったときは、慌てず乾いた布で軽く水気を取り、風通しの良い場所で自然乾燥させてください。ドライヤーや直射日光は革を硬くしてしまう原因になるため避けた方が安心です。
5.容量以上に詰め込む(注意度 ★★★★☆)
続いて気をつけたいのは「容量以上に詰め込む」ことです。
財布のカード段にカードを何枚も重ねて押し込んだり、レシートを溜め込んだまま使い続けたりすると、革に想定以上の負荷がかかります。型崩れの原因になるだけでなく、本来力がかからないはずのステッチや接合部にまで影響が及ぶことも。

革はしなやかな素材なので無理やり詰め込んでもある程度入ってしまうため「ついつい中身が膨れ上がっている」という方もいるかもしれません。しかし、一度入れすぎて革が伸びてしまうと、そこから元に戻らなくなってしまいます。
製品にはそれぞれ「想定している収納量」があります。カードポケットの枚数やマチの幅は、収納力だけでなく、詰めたときに革や縫製に無理がかからないラインを考えて決めています。
その想定を日常的に超えると、設計では受け止めきれない場所にストレスが分散し、思わぬ箇所から傷みが出ることがあるため、「入るから」といって無理やり詰め込みすぎないように注意しましょう。
6.お尻のポケットに入れたまま座る(注意度 ★★★★★)
パンツのポケットにお財布を入れている人も多いかと思います。しかし、ポケットの中は、革製品にとっては好ましい環境ではないため、注意が必要です。
夏場などは熱や湿気が溜まりやすく革を傷める原因になりますし、ポケットに入れたまま座ると体重による圧力がかかり、革の歪みや縫製部分への負荷につながることがあります。

修理品を見ていると、片側だけ縫製がほつれていたり、特定の面だけ革の色味が変わっていたりするケースがあります。お話を伺うと、いつも同じ向きでポケットに入れていたということが少なくありません。
座るときだけポケットから出すか、難しい場合は入れる向きを定期的に上下・裏表で変えてみてください。負荷が一箇所に集中するのを防ぐだけでも、革への影響はかなり軽減されます。特にスリムなパンツの場合は財布が動く余地が少ないため、少し意識しておくと安心です。
よくある質問
Q.革製品のお手入れはどれくらいの頻度ですればいいですか?
使い方や環境にもよりますが、月に一回程度、市販のクリームやオイルを薄く塗ってお手入れする程度で十分です。
Q.雨に濡れてしまった場合、どうすればいいですか?
乾いた布で軽く水気を拭き取り、風通しの良い場所で自然乾燥させてください。ドライヤーや直射日光は革を硬くしてしまうため避けましょう。乾いた後に薄くオイルを塗ってあげると安心です。
Q.財布にカードは何枚まで入れて大丈夫ですか?
製品ごとに収納枚数は異なります。Munekawaの場合は、各商品ページにカードの収納枚数を記載していますので、購入前にご確認ください。無理に詰め込むと型崩れや縫製部への負荷につながるため、余裕を持たせた収納をおすすめします。
Q.お尻のポケットに財布を入れるのは絶対にNGですか?
ポケットに入れて持ち歩くことを完全に禁止することはありません。小さな財布などはパンツポケットに入れて持ち歩ける便利さがありますし、基本的にはライフスタイルに合った使い方をしていただければと思います。ただし、入れたまま座ると体重で圧力がかかり、歪みや縫製のほつれの原因になります。座るときだけ出すか、難しければ入れる向きを定期的に変えてみてください。
Q.革製品についたキズや水ジミは修理できますか?
状態によりますが、完全に元に戻すのは難しい場合が多いです。ただし、軽度の水ジミはオイルケアで目立たなくなることもあります。縫製のほつれや構造的な傷みは修理で対応できることが多いので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ:まずはできるところから始めましょう
ここまでNG習慣を挙げてきましたが、すべてを徹底しなければならないわけではありません。革製品はあくまで日々の道具です。使い方がご自身の生活に合っているなら、それで問題ありません。使っていくうちに自然とついてしまうキズや使用感も、その人が使ってきた証であり、革の味わいのひとつです。

ただ、上に挙げた中でひとつでも「これは心当たりがあるかも」と感じたものがあれば、そこだけ少し意識してみてください。それだけで、お気に入りの革製品と過ごせる時間はずっと長くなります。
Munekawaでは、製品の修理やメンテナンスも承っています。万が一トラブルが起きても、ご相談いただければ対応できることが多くあります。「長く使える」を前提とした製作を大切にしています。
何か気になることや、お使いの革製品でお困りがありましたらお気軽にお問い合わせください。