ミニマルという言葉をよく見かけるようになりました。ファッション、インテリア、暮らし方。使われる場面は広がっていますが、「ミニマル」という言葉の意味するところや抱くイメージは人によってさまざまかと思います。
私たちMunekawaも、ブログやSNSで「ミニマル」という表現を使ってきました。
20年以上にわたって革製品を作り続ける中で感じるのは、ミニマルとは単に物を減らすことや装飾を省くことだけではない、ということです。

素材を選び、構造を考え、デザインを見直し、故障したものを修理する。その一つひとつの判断の中に、流行に左右されない選び方の基準が見えてきます。
今回は、そんなMunekawaの製品づくりを通じて見えてきた「ミニマルな革製品の魅力」についてご紹介します。
機能を削るほうが、実は難しい
ミニマルな道具というと、機能を削ぎ落としたものをイメージするかもしれません。ただ、実際に製品を作っていると、削ることよりも「何を残すか」の判断のほうが難しいと感じます。
たとえば、Munekawaが20年近く製作しているベル型キーケース「Bell」も、こうした「何を残すか」の判断が活きたアイテムです。
ベル型キーケース Bell

キーケースに大切な機能とは何かを考え、試作を繰り返し「まとまった本数の鍵が収納でき、鍵の出し入れがしやすい」というキーケースに対する必要最小限の要望を形にすることにたどり着きました。
背面のホックを外すと鍵の重さでスライドして出てくる仕組みも、「鍵を取り出す」という動作をシンプルに行えることを考えた結果です。

構造はシンメトリー(左右対称)のため、利き手に関係なく同じ動作で鍵を取り出せます。
Bellは「使う人を選ばず、誰でも使いやすい使い心地」から逆算して生まれた形です。こうして生まれたシンプルなデザインは、流行や暮らしの変化にあっても変わらない使い心地で長く愛用していただけると思います。
▶︎ベル型キーケースM Bell M 商品ページ
▶︎ベル型キーケースM Bell S 商品ページ
飾りを省くには、理由がある
「余分なパーツや装飾のないシンプルなデザインはトレンドに左右されにくい」という側面がありますが、作り手の側から言えば、ミニマムであることは実用面でもメリットがあると感じます。
封筒型長財布 Encase

封筒型長財布「Encase」には、ファスナーやボタンなどの金具が一切使われていません。
金具をなくすことで、引っかかりがないのでジャケットの内ポケットに入れても生地を傷めにくく、バッグの中でも出し入れがスムーズです。

また、金具は長く使ううちに壊れる可能性のあるパーツでもあります。それを省くことで故障のリスク自体を減らすことにも貢献しています。
このデザインは発売以来ほとんど変えていません。10年以上使い続けているユーザーもいて、革の色が深まるほどに封筒型の造形が際立つ製品です。
薄型小銭入れ Undo

薄型小銭入れ「Undo」も、Munekawaが20年以上にわたり改良を重ねながら作り続けているコインケース。シンプルな構造ながら革のエイジング(経年変化)の特性を活かしたコインケースとしてロングセラーの一品です。

Undoは、以前縫製していた箇所から縫製を抜く仕様変更を行いました。
コインケースは毎日フタを開閉するため、負荷がかかりやすく、以前は折り曲がる部分の糸が切れてしまいがちでした。この部分の縫製をしないことで、今では故障のリスクをより低くすることができています。
できる限りシンプルに、最小限に。こうした小さな改良を重ねていくことで、長く安心して使える革製品が提供できると私たちは考えています。
▶︎薄型小銭入れ Undo 商品ページ
修理できるかどうかも、選ぶ基準に
しかし、どんな道具でも傷みは出ます。Munekawaでも可能な限り余分なパーツを排し、故障しにくい構造を心がけていますが、長く使っていただければ、多少の不具合が出ることは避けられません。
だからこそ、Munekawaの製品は修理しやすい構造であることを大切にしています。
壊れた部分だけを取り替えられるよう設計することで、修理をスムーズに行え、お客様の元にすぐにお返しすることができます。これもミニマムな構造だからこそのメリットといえるでしょう。

Munekawaでは、革の選定から仕上げまで一貫して自社で行っているため、製品を熟知したスタッフが的確に修理対応できる体制が整っています。自社生産へのこだわりが、アフターサポートの質にもつながっています。
▶︎参考記事:Munekawaが自社生産を大切にする理由
ミニマムなデザインが映える素材
装飾を削ぎ落としたミニマムなデザインは、素材そのものが製品の表情になります。
過度な装飾がない分、革の質感や色味がそのまま見た目の印象を決める。だからこそ、素材選びには妥協できません。

Munekawaがメイン素材に選んでいるのは、植物タンニンなめしの代表格であるイタリア・ワルピエ社のブッテーロです。
植物タンニンなめしとは、原皮を植物由来の成分でじっくり加工する伝統的な製法で、革に芯のあるハリと透明感のある発色を与えます。表面に残る血管の跡(血筋)やシワも、シンプルなデザインの中ではむしろ個性として映えます。

もうひとつ重要なのは、素材としての耐久性です。植物タンニンなめしの革は繊維が締まっているため、型崩れしにくく、長く使っても構造を保ちやすい特徴があります。
Munekawaで使用しているブッテーロは、革の繊維に高温・高圧でプレスを加えるオリジナル加工を行い、さらに強度を高めています。
こうすることで使い込むほどにより一層色が深まり、艶が増していくため、経年変化そのものが「長く使い続ける理由」になります。
流行に左右されることのないミニマムな製品には、それに見合う長く使える素材であることが重要です。育つ素材であることは見た目の美しさと実用的な耐久性を両立させる条件でもあるのです。
まとめ
今回は、作り手としてのMunekawaの視点でミニマムなデザインの革製品の魅力をご紹介しました。
今回紹介したBell、Undo、Encaseはいずれも販売開始から20年近く経つアイテムです。
その間、ライフスタイルやトレンドもずいぶん変化しましたが、今もなお変わらず、たくさんの方にご愛用いただき、ご購入いただいています。

機能の残し方、余分なパーツや手数を省く理由、修理ができる体制、そして素材の見極め方。こうした視点を持っておくと、流行に左右されず自分に合った道具が見つかりやすくなります。
今回ご紹介した製品をはじめ、Munekawaではシンプルで機能的な革製品を製作しています。気になる製品があれば、ぜひオンラインショップや大阪・大国町の直営店で手に取ってみてください。
▶︎ベル型キーケースM Bell M 商品ページ
▶︎ベル型キーケースM Bell S 商品ページ
▶︎封筒型長財布 Encase 商品ページ
▶︎薄型小銭入れ Undo 商品ページ