The history of L-zip wallet “Cram”
L字ファスナー財布 “Cram”の歴史
L字ファスナー財布 Cram。
2018年の販売開始から、多くの方にご愛用いただき、今ではMunekawaでもっとも知られている製品になりました。
Cramの使いやすさの大きなポイントとなっているのが、紙幣を小銭入れの下に通して収納する「U字収納」です。
今では多くの製品で見られる仕様ですが、当時は他では見られない珍しい形でした。
なぜ、お札をU字に通す構造になったのか。独自構造の出発点にあったのは、「ミニ財布でも、使い心地には妥協したくない」という製作スタッフの想いでした。
今回は、Cram開発の中心を担った製作スタッフ・高橋の話をもとに、Cramが現在の形になるまでの経緯をたどります。
Chapter 01
“Cram”製作のはじまり
2018年、取引先のご要望をきっかけに「コンパクトで使いやすいミニ財布を作る」というコンセプトのもとCramの開発が始まりました。
きっかけはセレクトショップからのリクエスト
Cramを作るきっかけは、Munekawaの商品を取り扱うセレクトショップから「小銭とカードと紙幣がまとめて入れられるコンパクトな財布が作れませんか?」というご要望をいただいたことでした。
シンプルでミニマムなデザインを得意としてきたMunekawa。当時は紙幣と小銭を分けて持つ財布を多く作っており、 「お札・小銭・カード」をまとめて収納できる財布はそれほど多くありませんでした。
こうした取引先からのご要望を受け、会議で話し合った結果「コンパクトなL字ファスナー型の財布を作ってはどうか」という意見が出たことで、Cramの製作がスタートします。
L字ファスナー財布ならではの「課題」
当時、すでにL字ファスナー型のミニ財布の人気が高まりはじめている頃でしたが、こうした財布の中には、ある種の「使いづらさ」を感じるものがありました。
ひとつは「お金やカードの出し入れがしづらい」こと。
ミニ財布の中には、サイズ感にこだわるあまり、紙幣や小銭が確認や出し入れがしづらいと感じるものも少なくありませんでした。
紙幣とファスナーが触れやすく、ファスナーが紙幣を噛んでしまうケースが見られました。
そしてもうひとつの課題が「ファスナーがお札を噛んでしまう」こと。
L字ファスナー型のミニ財布の中には、製品によってはファスナーを開け閉めする際に紙幣を巻き込んでしまい、紙幣が破れてしまう物もありました。
L字ファスナー財布を製作するにあたって、Munekawaはこうした課題をクリアし、小さいだけではなく、細部まで使いやすいものにしたい。という思いがありました。
Chapter 02
U字収納が生まれるまで
小銭を見やすく、取り出しやすくするにはどうすればよいか。小銭入れの底を浅くする工夫から、Cramを象徴するU字収納の発想が生まれます。
最初に決めたのは、小銭入れを浅くすること
2018年5月、1stサンプルの製作がスタートしました。
1stサンプルを作るうえで、高橋には実現したかったことがありました。それが「小銭入れの底を浅くする」ことです。
底部分に縫製を入れて、深さを抑えています。
小銭入れが深いと、中身を確認しにくく、底にある硬貨へ指が届きづらくなります。底を浅くすれば、入っている小銭を見渡しやすくなり、必要な一枚も取り出しやすくなります。
コンパクトな財布に入れる小銭は、必要最低限の10枚程度でよい。たくさん入ることよりも、会計時に小銭が取り出しやすいことを優先し、最初のサンプルでは、小銭入れの底を縫製することで深さを抑えていました。
宗川の一言から生まれたU字収納
1stサンプルが完成し、小銭入れの仕様について社内で説明していた時のことです。
Munekawa代表の宗川が、ふと思いついたようにこう言いました。
底上げするために縫製するのではなく、そもそも不要な部分はカットして、小銭入れを宙に浮かせたらどうか。そうしたらその下に空間ができるので、そこにお札をU字で収納すれば便利になるのではないか。
Munekawa代表・宗川
小銭入れを底に縫いつけるのではなく、底を浮かせて空間を作ることで紙幣の収納スペースを作れば、お札を二つ折りにせず収納できます。小銭を取り出しやすくするための工夫が、紙幣をファスナーに挟みにくくする構造へとつながりました。
しかし、高橋自身、当時は同じ構造をほかの財布で見たことがなく、特定のブランドや製品を参考にしたものではありませんでした。それだけに、すぐ確信を持てたわけではなかったといいます。
「小銭の重さで、小銭入れが垂れてくるかもしれない」
「この構造を受け入れてもらえるだろうか」
という不安がありました。
製作スタッフ・高橋
他では見慣れない独自の構造を受け入れてもらえるのかという不安はありましたが、考えるだけで結論を出すのではなく、まずはサンプルを作り、実際に小銭と紙幣を入れて試してみたところ、まったく問題なく使用できることがわかりました。
当初の懸念点だった「ファスナーがお札を噛む」という点も解決でき、まさに「一石二鳥」のアイデアだったのです。
考えるだけで結論を出すのではなく、形にして確かめる。U字収納は、そうした試作の積み重ねからCramの中心的な構造になっていきました。
Chapter 03
試作を重ねて、現在の形へ
新しい構造は、アイデアだけでは製品になりません。ファスナーの位置や縫製方法を何度も見直し、使いやすさとすっきりとした見た目を両立させていきました。
試行錯誤したファスナーの仕様
U字収納の構造が決まったあとも、調整は続きました。大きな課題の一つが、ファスナーをどこまで回り込ませるかです。
Cramのファスナーは、一般的なL字よりも終端が下へ回り込み、横から見るとJ字のような形をしています。しかし、単純に深くすれば使いやすくなるわけではありません。
ファスナーを深く回り込ませた3rdサンプルは、開きやすくなった一方で、紙幣を噛んでしまうことがわかりました。そこで位置を見直し、開きやすさと紙幣の収まりを両立できる現在の5thサンプルの形へ調整しました。
実際の開き具合だけでいえば、1stサンプルや一般的なL字ファスナー財布と大きく変わるわけではありません。それでも大きく開くように感じられるのは、内側のパーツを整理し、中身を見渡しやすい構造にしているためです。
見た目と強度を両立するための「ひと続きの縫製」
縫製にもこだわりがあります。ファスナーを取り付ける際、左右のテープを革に縫い付ける必要があるのですが、Cramは、この縫製をファスナーの終わりまでひと続きに縫っています。
こうした形状の場合、左右片側ずつ分けて縫製して終端をつなげる方が難易度が低いのですが、ひと続きで縫うことで表側から見ても内側から見ても縫い目が綺麗になるうえ、糸ほつれも起こりにくくなるため、Munekawaではこの方法を取っています。
Chapter 04
発売後も続けてきた改良
2018年に販売を始めてからも、Cramの改良は続いています。実際の使い心地やお客様の声をもとに、細部を見直してきました。
ファスナーをEXCELLAへ
外側のファスナーは、YKKの高級ライン「EXCELLA(エクセラ)」へ変更しました。エレメントと呼ばれる務歯の形や加工が美しく、テープ部分の生地もしっかりしています。
金具には、華やかなゴールドではなくライトアンティークブラス加工を採用。革の表情に馴染む、落ち着いたマットゴールドに仕上げています。
小銭入れの傾斜を反対に
発売当初は、小銭がマチ側に集まるほうが取り出しやすいと考え、現在とは反対方向に傾斜をつけていました。しかし、マチ側へ小銭が集まると、その重なりが財布全体の厚みにつながります。
そこで傾斜を反対にし、小銭が一か所に集まりすぎない形へ変更しました。小銭の見やすさを保ちながら、財布の膨らみを抑えるための改良です。
お客様の声から変わったカードスリーブ
カードスリーブも、横幅と底の形を変更しています。
きっかけは、「紙幣を入れるときにスリーブへ当たり、入れづらい」というお客様の声でした。スリーブを長くすることで、紙幣が端へ引っかかりにくくなり、U字に沿わせて差し込みやすくなりました。底部の形も見直し、縫製のしやすさも高めています。
完成した形を守るだけでなく、使う人の声から小さな不便を見つけ、必要な部分を見直す。そうした積み重ねも、Cramの8年間を形作っています。
Chapter 05
8年を経て、いま思うこと
販売開始から約8年。自らCramを使い続けてきた製作スタッフ・高橋の言葉から、現在の形へ受け継がれた考えと、Munekawaらしいものづくりを振り返ります。
販売開始から8年間、Cramを使い続けて
高橋は、販売開始から約8年間、自身でもCramを使い続けています。
販売当初は、お札をU字に通す収納方法に驚かれることも少なくありませんでした。しかし、使い方を知っていただくにつれ、目新しさだけではなく、L字ファスナー財布で起こりやすい「紙幣に折り目がつく」「ファスナーが紙幣を噛む」といった不便を抑える機能も評価されるようになりました。
シンプルな見た目で、小さく、見やすく、必要なものがきちんと入る。2018年に目指した使いやすさは、細部の改良を重ねながら現在のCramへ受け継がれています。
「販売当初は不安でしたが、長年の試行錯誤と改良を重ねた今、このアイデアが多くの方に受け入れられて嬉しく思います」
製作スタッフ・高橋
これからも、Munekawaらしいものづくりを
U字収納の出発点は、「小銭を見やすく、取り出しやすくしたい」という身近な発想でした。いくつものサンプルを作り、発売後も使う人の声を受けながら調整を続けてきました。
他と比べるためではなく、目の前の使いにくさを一つずつ減らすために考える。その積み重ねが、Cramという財布の形になっています。
「これからも他にはない、Munekawaらしいものづくりを続けていきたいと思います」
製作スタッフ・高橋
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小銭の見やすさを考えるところから始まり、試作と改良を重ねて現在の形になったCram。現在の仕様や収納方法、Cramシリーズ一覧は、各ページからご覧ください。
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