革好きの方なら一度は耳にしたことがあるかもしれない、イタリアの革「ブッテーロ」。
シンプルに説明するなら、「イタリアの伝統的な製法で、植物のタンニンを使ってじっくりとなめされた革」でしょう。

私たちムネカワが、ブッテーロを定番素材として採用してから、20年以上経ちました。 これほど長く使い続ける理由は、とてもシンプルです。
それは、一言で「使いやすい革」だからです。
これは、作り手にとって、という意味ではありません。
ブッテーロは「製品の使い手にとって、非常に使いやすい革」なのです。
では、具体的にどう「使いやすい」のでしょうか。 その理由は、主に3つあります。
- 革だからと、過度に気を使う必要がない丈夫さ。
- 特別な手入れなしでも、自然と美しい艶と風合いに育つ。
- 繊維の密度が高く、長く使っても「クタクタ」になりにくい。
革製品に求める大切な要素を、このブッテーロはしっかりと満たしてくれる。私たちはそう考えています。
ここからは、この3つの理由をさらに詳しく掘り下げていきましょう。
1. 革だからと、過度に気を使う必要がない丈夫さ。
世の中には色々な種類の革があり、「どれを選べば良いかわからない」と感じる方も多いかと思います。好みで選べることと言ったら、革の色味や、手触りが「柔らかい」か「ハリがある」か、そのくらいかもしれません。

ブッテーロは、その「柔らかい」と「ハリがある」ちょうど中間に位置するような革です。
最初は少し硬く感じるかもしれませんが、使い続けると馴染んで、手触りが柔らかくなり、使いやすくなっていきます。
革というと「傷がつかないように大切に使わないといけない」というイメージを持っている方もいますが、そんなことはありません。
気軽に使いながら、徐々に自分の手に馴染む形に変化していく。
その様子を楽しめるのがブッテーロの一番の魅力と言えると思います。
2. 特別な手入れなしでも、自然と美しい艶と風合いに育つ。
革製品の醍醐味である「エイジング(経年変化)」を楽しみたい、という方は多くいらっしゃいます。その一方で、「綺麗にエイジングさせられるだろうか」と、心配して購入を迷う方もいらしゃると思います。
その点において、ブッテーロは非常に優れた革です。
実際に、特別なケアをあまりされていなくても、艶と深みのある色合いに育っているお客様もいらっしゃいます。

もちろん、より美しく変化させるためには、連日汗が染み込むような使い方を避けたり、アルコールなどの揮発性液体を付着させない、といった少しの注意は必要です。 それさえ守れば、ブッテーロは美しくエイジングしてくれます。
さらに時々レザーケアを施せば、その変化は一層味わい深いものになります。 ブッテーロをエイジングさせるのは、本当に簡単ですので、まずは一度使ってみてください。
3. 繊維の密度が高く、長く使っても「クタクタ」になりにくい。
私たちが考える「良い革」の定義の一つに、「繊維の密度が高いこと」があります。 なぜなら、革の持つコシやハリは、お客様に製品を長く愛用していただく上で非常に重要だからです。
繊維が詰まっていない革だと、長年使ううちに伸びたり型崩れしたりして、「クタクタ」になってしまうことがあります。愛着を持って使ってきたものがそうなってしまうのは、とても残念です。

特に革小物は、限られたスペースに多くの機能を詰め込むため、革を薄く漉(す)いて使うことが少なくありません。だからこそ、革自体の繊維の密度と粘り強さが、製品の寿命を大きく左右します。
この3点を押さえているブッテーロの革製品は、長く楽しんで使ってもらえる事、間違いなしです。気軽に生活を便利にするアイテムとして革製品を使って頂けたら、私たち作り手はとても嬉しく思います。
使い始めは、少し硬い革で「使いこなせるかな?」と感じるかもしれません。しかし、数週間もすれば、革は少しずつ柔らかく、あなたの使い方に馴染んできます。

そこからが、ブッテーロの本領発揮です。 色は深みを増し、表面には美しい艶が生まれます。毎日使っているご自身では気づきにくいかもしれませんが、一ヶ月も経てば、その表情は確かな変化を遂げているはずです。
ブッテーロは、使い手が革に合わせるのではなく、革が使い手に寄り添ってくれるような、懐の深い革です。
革の「エイジング」がもたらすもの
革にあまり馴染みのない方からすると、「革が経年変化することに、どんなメリットがあるの?」と疑問に思われるかもしれません。
正直にお伝えすると、エイジングによる機能的なメリットは、ほとんどありません。
しかし、それ以上に「満足感」という大きな心理的メリットを感じることができます。

革のエイジングとは、まさに自分自身が製品と共に過ごしてきた歴史そのもの。
日々の暮らしの痕跡が、唯一無二の表情となって革に刻まれていきます。
そこに愛着が生まれ、「もっと長く使いたい」という気持ちが育っていく。使えば使うほど、それは単なる「モノ」ではなく、「かけがえのない存在」に変わっていくのです。
私たちムネカワは、お客様にとってそんな存在になるような革製品を届けたい。その想いを込めて、日々製作に取り組んでいます。